シャドーAIとは何か?許可なくAIを使う社員が会社を危険にさらす理由 「社内AI推進者がいたらこうなる!」シリーズ 第2回

このブログでわかること

  • シャドーAIとは何か、わかりやすく解説
  • シャドーAIが広がる要因
  • 「禁止」より「推進者による管理」が正解である理由
  • 今日から始められる対処法

はじめに:生成AIという便利な道具の裏側にあるリスク

生成AIは、仕事を効率化する便利な道具です。メール文の作成、議事録の要約、資料のたたき台づくり、アイデア出しなど、うまく使えば日々の業務を大きく助けてくれます。

しかし、その一方で、会社が把握しないまま社員が勝手にAIツールを使っている状態が、企業にとって新たなリスクになっています。それが、今回のテーマである「シャドーAI」です。

SIGNATE総研の2025年12月調査では、利用背景として「業務効率・生産性の向上」や「新技術の試行」——等、前向きな意図が多いのですが、こうした行動が、顧客情報や見積データ、社内資料の情報漏洩につながる可能性があります。

また、生成AI利用者の34.8%が会社非公認のAIツールを業務で使用していると回答しています。つまり、AIを使っている社員の3人に1人以上が、会社の許可を得ずに使っているということです。

会社にしっかりとしたルールや基準がなければ、いえ、ルールや基準があっても教育や周知、モニタリングなどの機能がなければ、シャドーAIは広がり、情報漏洩などにより会社を危険にさらします。

今回は、「社内推進者がいたらこうなる」シリーズ第2回として、シャドーAIとは何か、なぜ危険なのか、そして会社としてどう対策すべきかをわかりやすく解説します。

シャドーAIとは何か——定義から解説

シャドーAIとは、『会社が許可・管理していないAIツールを、社員が業務で勝手に使っている状態』を指します。以下がよくある行動です。

 顧客情報をそのままAIに入力する
「ChatGPTで提案書を作ろう」と、顧客名・担当者名・予算・課題をそのまま入力する。

② 会議内容をAIに要約させる
取引先との商談メモをAIに直接入力し、議事録を作る。

③ 見積書のデータをAIに計算させる
「AIに計算させると速い」と、仕入れ価格・利益率・取引先名を含む見積データをそのまま入力する。

④ 社内の未公開情報をAIで整理する
「新製品の企画書をわかりやすくして」と、発表前の内部資料をAIに入力する。

⑤ 個人アカウントのAIツールで、社内資料を作成する
使いたいAIが会社で許可されておらず、個人アカウントを作成し業務に使用する。

これらの行動は、深刻なリスクを引き起こす可能性があります。

なぜシャドーAIは広がるのか——経営者が知るべき「3つの心理的要因

シャドーAIが増えている背景には、生成AIの使いやすさにあります。
以前は、新しいITツールを使うには、導入申請や設定、費用の確認が必要でした。しかし、生成AIは個人でも簡単に無料で使えます。スマートフォンや個人PCからもすぐに利用できます。

そのため、社員は次のように考えがちです。

「少し文章を直すだけだから大丈夫」
「名前を消しているから問題ない」
「社外秘とは書いていないから入力してもいい」
「仕事を早く終わらせるためだから会社のためになる」

たしかに、生成AIを使って業務効率を上げようとする姿勢自体は悪いことではありません。

問題は、何を入力してよいのか、どのAIなら使ってよいのか、会社としてルールが決まっていないことです。

原因①:AIの利用ルール・ガイドラインが整備されていない

原因②:業務で使いたいAIが会社から提供されていない

原因③:生成AIの利用が急速に普及し、AIを使うことが当然の空気になっている

シャドーAIがもたらすリスク

シャドーAIがもたらす最大のリスクは、会社が利用実態を把握できないことです。
どの社員が、どのAIツールに、どの情報を入力したのか。
会社が知らなければ、情報漏洩やトラブルが起きたときに原因を追跡できません。

特に注意が必要なのは、次のような情報です。

• 顧客名、担当者名、連絡先
• 見積金額、契約条件、提案内容
• 社内会議の議事録
• 未公開の事業計画
• 人事・労務情報
• システム構成やソースコード
• 取引先から預かった資料
• 社外秘・機密扱いの文書

機密情報の漏洩はもちろんのこと、調査、復旧、改善策まで、発生原因がわからないことで膨大な時間を要します。敷いては、法令違反や誤情報の拡散、サイバー攻撃の入口となるリスクまで、企業経営を揺るがす脅威は様々です。

シャドーAIは「禁止」では解決しない

「だったら、AI禁止にすればいい」と思っている経営者様にとって、耳の痛い話があります。

「生成AIは危険だから全面禁止!」という方針を打ち出す方もおられるかもしれませんが、これではかえって従業員が隠れてシャドーAIを使用することを助長する恐れがあります。なぜなら、社員はすでに生成AIの便利さを知っているからです。仕事を早く終わらせたい、文章を整えたい、考えを整理したいというニーズはなくなりません。

実際に起きることは次のとおりです。

「AIを使うな」という通達が出る→社員は使うのをやめない→「バレなければいい」という意識が生まれる→ますます管理ができない状態になる。

ガートナージャパンが2026年6月に発表した調査では、シャドーAIへの有効な対策を取れていないと回答した国内企業は7割超に上っています。

日本の企業の7割が対策できていない。これは言い換えれば、今、対策した会社が一気に少数派の「安全な会社」になれるチャンスでもあります。

シャドーAIへの正しい対処法——社内AI推進者がいると変わること

シャドーAI問題を根本的に解決するには、「禁止」ではなく「管理された活用環境の整備」が必要です。そしてその整備を担うのが、社内AI推進者です。

対処法① 社内AIガイドラインをA4一枚から作る

「入力してよいもの・ダメなもの・グレーゾーン」を一枚の紙にまとめるだけで、社員の行動が変わります。完璧なルールである必要はありません。「まず作る」ことが最重要です。

入力してよいもの(例)

  • 社内向けの一般的な文章の下書き
  • 公開情報をもとにしたリサーチ
  • 汎用的な業務マニュアルの作成

入力してはいけないもの(例)

  • 顧客の氏名・住所・電話番号・メールアドレス
  • 取引先との契約内容・見積金額
  • 社内の未公開情報・経営計画

社内AI推進者がいれば、このガイドラインを作り、全社員に説明し、「わからないことは相談する」という文化を作ることができます。

対処法② 「使っていい公認ツール」を会社が示す

社員がシャドーAIを使う最大の理由は「会社が何も提供してくれないから」という状況もあります。会社として「このツールを使っていい」という公認リストを出すだけで、シャドーAIの多くは防げます。

推進者がいれば、部署ごとの業務内容を把握した上で「この部署にはこのツールが向いている」という提案ができます。

対処法③ 研修で「なぜ危険なのか」を伝える

ルールを作るだけでは不十分です。

社員が「なぜ顧客情報をAIに入力してはいけないのか」「なぜ会社未承認のAIを使うと危険なのか」を理解していなければ、ルールは形だけになります。

生成AIの仕組み、情報漏洩のリスク、著作権や個人情報の注意点を、実務に近い例で説明することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. シャドーAIはすでに起きていますか?どうすれば確認できますか?

A. 社内アンケートや推進者による個別ヒアリングが最も有効です。「AIを業務で使ったことがあるか」という質問だけで実態が見えてきます。ただし「使ったら怒られる」という空気がある職場では正直に答えてもらえないため、「使っていても責めない」という前提を先に伝えることが重要です。

Q. シャドーAIを禁止する社内規定を作れば十分ですか?

A. 十分ではありません。禁止規定は「バレなければいい」という意識を生み、問題を潜在化させます。禁止するのではなく「安全に使える環境を整備する」ことと「使っていいツールを会社が明示する」ことが根本的な解決になります。

Q. 中小企業でもシャドーAI対策は必要ですか?

A. むしろ中小企業こそ必要です。総務省の情報通信白書(2025年版)によれば、日本の中小企業の約半数が生成AIの活用方針を策定していません。大企業より対策が遅れている中小企業は、リスクにさらされている時間も長くなります。一方で、組織が小さい分、推進者1人が動けば全社に周知が届きやすいという強みもあります。

Q. シャドーAIは情報漏洩以外にどんなリスクがありますか?

A. 主に3つあります。①個人情報保護法違反(顧客情報の無断入力)、②著作権侵害(AI生成物の無断利用)、③意思決定の品質低下(AIの誤情報・ハルシネーションを確認なしに採用してしまう)です。IPA(情報処理推進機構)が発表する「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて第3位にランクインしており、社会的な関心が急速に高まっています。

Q. 社内AI推進者がいると、シャドーAIはどう変わりますか?

A. 推進者がいる会社では、①ガイドラインの整備、②公認ツールリストの作成、③相談窓口の設置、という3つが機能します。「何を使っていいかわからないから自己判断する」という状況がなくなり、シャドーAIは自然に減っていきます。当社の社内AI推進者養成講座では、このガイドライン作りを講座内で実際に行い、受講後すぐに自社に持ち帰れる形で整備します。

まとめ:「知らなかった」では済まされない時代が来ている

シャドーAIは、ルールと環境が整備されていない会社に生まれる問題です。

2026年5月、警視庁は公式アカウントで「個人の判断で生成AIを業務利用していませんか。組織が管理していない生成AIを業務で使用するシャドーAIには様々なリスクが潜んでいます」と注意を呼びかけています。

国が警告を出すレベルの問題になっています。「うちには関係ない」と言える会社は、もうありません。

今日から始められることは一つ。社内AI推進者の存在を考えていただくことです。
その答えが、御社のシャドーAI対策の出発点になります。


「どこから始めればいいかわからない」でも大丈夫です。
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出典:SIGNATE総研「生成AI利用実態調査」(2025年12月)/IBM「Cost of Data Breach Report 2025」/Cyberhaven Labs「2025 AI Adoption & Risk Report」/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月)/総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年)/ガートナージャパン「シャドーAI対策調査」(2026年6月)/警視庁 公式X投稿(2026年5月)