生成AI最前線第4回 生成AIの便利さの裏側にあるもの データセンターと電力の現実

生成AIの登場によって、私たちの生活や仕事は少しずつ変わってきました。
文章を書くのは楽になりましたし、調べ物も手早くできるようになりました。

ですが、その裏側でも大きな変化が起きています。
それが、データセンターの電力需要です。

生成AIの裏側にはデータセンターがある

生成AIは、私たちのスマホやパソコンの中だけで動いているわけではありません。
質問を送ると、その情報はデータセンターと呼ばれる大きな施設に送られ、そこで処理されます。

データセンターには、多数のサーバーが並んでいます。
これらを使って生成AIの答えを生成するのですが、その際、大量の計算が行われています。

そして、大量の計算には大量の電気が必要です。
また、大量の電気を使って計算すると、大量の熱も発生します。
サーバーは熱に弱いので、発生した熱を冷却するための設備が必要です。
この冷却にも、少なくない電力が使われます。

そのため、大規模なデータセンターでは非常に大きな電力が必要になります。
国際エネルギー機関は、2024年の世界のデータセンターの電力消費を、世界全体の電力消費の約1.5%と推計しています。
割合だけ見ると小さく見えるかもしれません。
しかし、データセンターは特定の地域に集中しやすいため、その地域の電力網には大きな負担になることがあります。

データセンターに圧迫されるアメリカの電力事情

特にアメリカでは、AI向けデータセンターの建設が急速に進んでいます。
その結果、電力をどう確保するのか、送電網をどう整備するのか、電気料金に影響しないのか、といった問題が出てきています。

実際、アメリカではデータセンター建設に対する反対運動も起きています。
ニュージャージー州ミルビル市では、電力や水の消費、公共料金への影響、騒音などへの懸念から、大規模データセンターの新規建設を禁止する決定が出されました。

また、環境問題も浮き彫りになってきています。
たとえばMicrosoftは、AIやクラウドの拡大などを背景に、2020年と比べて温室効果ガス排出量が23.4%増えたと公表しています。
報道では、AIデータセンターの拡大によって、2030年のクリーンエネルギー目標を見直す可能性も指摘されています。

生成AIを支える施設は、便利な技術の裏側にある一方で、地域の暮らしにも影響を与える存在になりつつあります。

日本にもいずれ、データセンターの電力問題は訪れる

日本ではどうでしょうか?

実は日本でも、データセンターの整備は進んでいます。
千葉県の印西・白井エリアでは、約250MW規模の大規模データセンターキャンパス計画が発表されています。
また北海道苫小牧市でも、日本最大級のAIデータセンターが2026年度に開業予定です。
アメリカほど大きな問題になっているわけではありませんが、日本でも無関係な話ではありません。

もちろん、アメリカと同じ問題がすぐに起きると決まったわけではありません。
ただ、国内でAIを活用する動きがさらに広がれば、それを支える設備も必要になります。
日本でも、早めに考えておきたいテーマです。

まとめ

生成AIは、とても便利な道具です。
一方で、それを実現するために、大きなコストがかかっているのも事実です。

今回は電力を取り上げましたが、ほかにもサーバーの部品に使われるレアメタルの問題などもあります。
便利さが強調される一方で、解決していかなければならない課題も存在するということです。

これからAIがさらに広がっていく中で、便利さだけでなく、私たちの暮らしへの影響にも目を向けていきたいところです。

生成AI最前線第3回 続・最近話題のClaude Mythosとは? AIの成果と私たちが取るべき対応

先週取り上げた「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」。
この一週間で、さらに動きがありました。

前回は、Claude Mythosがソフトウェアの弱点を見つける力に優れていることを紹介しました。
今回は、その力がどれほどのものなのか、公式の発表をもとに、見ていきたいと思います。

※公式には「Claude Mythos Preview」と呼ばれていますが、この記事では分かりやすくClaude Mythosと呼びます。

1万件超の重大な脆弱性を発見

2026年5月22日、Anthropicは、Project Glasswingという取り組みの初期報告を公開しました。
それによると、世界中で使われている重要なソフトウェアから、1万件を超える深刻度「高」または「重大」の脆弱性を見つけたとされています。

脆弱性とは、ソフトウェアのセキュリティ上の問題のことです。
放置されると、不正アクセスや情報漏えい、サービス停止などにつながる可能性があります。

ここで問題なのは、1万件というのが多いのかどうかということですね。
基本的に、どのソフトウェアも公開前にテストが行われています。
本来、脆弱性はできるだけゼロに近づけて公開されるべきものです。

にもかかわらず、1万件を超える脆弱性が見つかりました。
Cloudflare 社では、重要システム全体で2,000件のバグが見つかり、そのうち400件が高または重大だったとされています。
このような事実からも、その能力の高さを推し量ることができるかと思います。

問題のトリアージが必要

とはいえ、実のところ、生成AIが見つけたものすべてが本物とは限りません。
文章作成と同じように、ハルシネーションを起こすことがあります。
そのため、人間の専門家が確認し、本当に危険なのか、修正が必要なのかを判断する必要があります。

ここで問題になるのが、スピードです。
AIは大量の弱点を見つけられるようになりました。
しかし、それを確認し、開発者に伝え、修正し、利用者にアップデートしてもらうには、人間の手間と時間がかかります。

つまり、「AIが弱点を見つけられるようになった」のはいいものの、「見つける速度に、直す速度が追いつくのか」という新しい問題が出てきているというわけです。

まとめ

Claude Mythosをめぐる最近の動きは、各国に大きな波紋を広げています。
日本やヨーロッパでも、金融機関や公的機関が影響を確認し、対応を進める動きが出ています。

また、ChatGPT を提供する OpenAI 社も、GPT-5.5-Cyber という生成AIを用意し、サイバー防御に関わる「Daybreak」というプロジェクトを立ち上げています。
つまり、サイバーセキュリティの分野でも、生成AI同士の覇権争いが始まりつつあるのです。

一方、これらの活動は、話が大きすぎて、ちょっと他人事のように感じてしまいます。
しかし、私たちも無関係ではありません。

生成AIがサイバー攻撃に使われた場合、これまで以上に、素早く広範囲に攻撃をしかけると予想されます。
そうなると、これまで標的にならなかった私たちの会社も攻撃に巻き込まれるリスクが増えます。

Claude Mythos の成果に基づき、今後、各ベンダー(ソフトウェアを作っている会社)からアップデートが提供される可能性があります。
ユーザーである私たちは、しっかりとそのアップデートを適用しておくことが、身を守る術となります。

一連のニュースを、「すごいAIが出た」という話題で終わらせるのはもったいないです。
しっかりとその意味を理解し、私たちにはどう影響するのかを考えて読み解いていくことが重要です。

生成AI最前線第2回 最近話題のClaude Mythosとは? すごすぎる生成AIの現在

「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」という名前を聞いたことはあるでしょうか。
最近、生成AIの分野で話題になっている言葉です。

Claudeは、アメリカのAnthropicという会社が提供している生成AIです。
ChatGPTと同じように、文章を書いたり、質問に答えたり、プログラムを書いたりできます。

ただ、Claude Mythosが注目されているのは、単に「文章がうまい」「回答が賢い」という点だけではありません。
「ソフトウェアの脆弱性、つまり、セキュリティ上の問題を見つける力が非常に高い」とされている点です。

※公式には「Claude Mythos Preview」と呼ばれていますが、この記事では分かりやすくClaude Mythosと呼びます。

何がそんなにすごいのか

これまで生成AIは、「文章を書いてくれる」「プログラムの手伝いをしてくれる」ものとして見られてきました。

しかし、Claude Mythosで注目されているのは、その先です。
複雑なプログラムを読み解き、どこに弱点があるのかを探せるようになってきたのです。
条件によっては、人間より先に、AIが弱点を見つける場面も出てくるようになりました。

実際、Claude Mythosは、主要なOSやWebブラウザを含む重要なソフトウェアから、多くの深刻な弱点を見つけたと説明されています。
中には、27年近く見つかっていなかったものもありました。

何が問題なのか

一見すると、これは素晴らしいことに思えます。
AIが自動で弱点を探してくれるのですから、人間より早く、的確に、弱点に対応できるようになるはずです。

問題は、これが悪用された場合です。

もし、悪意を持った人の使うAIが先に弱点を見つけてしまった場合、どうなるでしょうか?
悪意を持っているわけですから、当然、その弱点を狙って攻撃してきます。

ですが、守る側がその弱点にまだ気づいていなければ、すぐに対策をとることは難しくなります。
攻撃を受けてから原因を調査し、初めてその弱点に気づく、ということも起こり得ます。

これでは遅いのです。

何をしたのか

そこでAnthropicは、Claude Mythosを誰でも使える形では公開せず、防御目的で活用できる限られた組織に提供する形を取りました。

この取り組みが「Project Glasswing(プロジェクト・グラスウィング)」です。
これには、AppleやGoogle、Microsoftなど、世界的なIT企業が名を連ねています。

特に金融分野では、各国で対応が進んでいます。
アメリカでは大手銀行がClaude Mythosへの対応を急いでおり、ヨーロッパでも銀行に備えを促す動きが出ています。
日本でも、メガバンクがClaude Mythosにアクセスできるようになる見込みだと報じられています。

まとめ

Claude Mythosの話題は、生成AIの機能が新たなステージに到達したことを意味しています。

これからの生成AIは、プログラムを作るだけではありません。
プログラムの弱点を探し、直し、防御に役立てるところまで広がっていくかもしれません。

ですが、便利になる一方で、悪用されたときの影響も大きくなります。
だからこそ、「すごいAIが出た」で終わらせるのではなく、そのAIが何に使われるのか、どのように管理されるのかにも目を向ける必要があります。

生成AI最前線第1回 ChatGPTに広告が出る? 生成AI時代の「無料」とどう向き合うか

「文章を考える」
「調べ物をする」
「仕事の相談をする」

ChatGPTのような生成AIは、とても身近な存在になってきました。

そんな中、ChatGPTに広告が表示される可能性が出てきています。
どういうことでしょうか?

何が起きようとしているのか

OpenAI(ChatGPTの開発元・提供元)は、ChatGPT内に広告を表示するテストを進めています。
元々はアメリカで始まったものですが、今後は日本にも範囲を広げると発表されました。
対象は主に無料・低価格プランのユーザーで、有料の上位プランや法人・教育向けプランは対象外とされています。

公式サイトの発表(英語)
https://openai.com/ja-JP/index/testing-ads-in-chatgpt/

つまり、現時点では「すべての人に広告が出る」と決まったわけではありません。
まずは一部の地域やプランで試しながら、利用者の反応を見ている段階です。

一番気になるのは「回答」

広告と聞いて一番気になるのは、「広告によってChatGPTの回答が変わってしまうのか」ではないでしょうか?
例えば、AIは事実を調べてくれただけだと思ったら、その内容が実は広告だった。
利用者からすると、「広告なのに広告だと分からない」というのは困りますよね。

この点について、OpenAIは「広告はChatGPTの回答に影響しない」と明言しています。
これはひとつの安心材料です。

とはいえ、ChatGPTからの回答に広告が表示されていれば、利用者はどうしても意識してしまいます。
つまり、ChatGPTの回答は変わらなくても、受け手の印象は変わる可能性がある、ということです。

なぜAIサービスに広告が必要になるのか

一方で、「そもそも、ChatGPTに広告なんて不要だ」と感じる方もいると思います。
ネット広告にあまり良い印象を持っていない方もいるかもしれません。

ですが、生成AIを動かすためには、サーバーや電力、人材、研究開発など、たくさんのお金が必要です。
多くの人が無料で使える状態を続けるには、どこかで収益を得る必要があります。

歴史的に見れば、検索エンジンやSNSも、広告があることで無料で使えていました。
その流れを考えると、ChatGPTに広告が入るのも、仕方ない部分はあると思います。

まとめ

広告が表示されるからといって、すぐにChatGPTがダメになるわけではありません。
ただ、これまでは意識しなくてよかった「回答と広告の区別」について、今後は少し注意が必要になってきます。

これは単なる事実か? 宣伝目的の広告か?
AIの回答を無条件に信じるのではなく、広告表示や根拠を確認しながら使わなければなりません。
仕事で使う場合は、広告が表示されない法人向けプランを検討する必要もあるかもしれません。

生成AIは、とても便利な道具です。
ですが、何事も無料・安価で使える裏には、必ずそれを支える仕組みがあります。
これからの生成AI時代には、便利さだけでなく、その仕組みも理解しながら付き合っていくことが大切です。